産業看護職は仕事柄、
いろんな人の悩みごと困りごとを聞く立場にいると思います。
ときどきは、なぐさめや励ましの言葉をかけることもありますよね。
あなたはそういうとき、
どういうことを気にかけますか?
考えるきっかけとして、
最近、私がきいたケースを2つご紹介します。
事例①
産業看護経験の浅いAさんの場合。
Aさんは、同一テーマで複数回の健康教育を担当しています。
終了後にアンケートを書いてもらっていますが、
アンケートの自由記載欄には、
下記のようなネガティブなコメントが書かれていました。
「何の意味があるのかわからない」
「時間のむだ」
「資料がごちゃごちゃしていて見にくい」
「内容がありきたりでつまらなかった」
もちろん、自由記載欄には、
たくさんのポジティブなコメントも書かれていました。
「わかりやすかったです」
「私もやってみようと思えました」
「こういう教育は大事だと思う」
「資料がていねいでわかりやすい」
ポジティブコメントのほうが数が多いし、
全体として、健康教育は好意的に受け入れられており、
役に立ったという人が多いのですが。
Aさんは、
「ネガティブコメントが心に刺さってしまい、落ち込んでしまう」
のでした。
同じ職場の先輩に、そのことをちょっとグチってみました。
先輩はこう言ってなぐさめてくれました。
「でも、ポジティブなコメントのほうが多いんだし、
気にすることないよ。
いろんな価値観の人がいるから、仕方ないよね~」
と。
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事例②
産業看護経験15年くらいのBさんの場合。
Bさんの受け持ちの従業員の中に、
健診結果は「要経過観察」の判定だが、
年々じりじりと検査値が悪化している、
従業員Cさんがいました。
Bさんは、どうしても気になるので、
Cさんを呼び出して再検査を受けるように説得したそうです。
Cさんはプロジェクトの中心メンバーとして非常に忙しく、
何度か再検日時を変更したのちに、
ようやく再検査を受けてくれました。
再検査の結果は健診時よりも悪化しており、
Bさんは精密検査を勧める通知を出しました。
その後もしばらく、Cさんは精密検査に行けなかったようです。
そしてある日、体調を崩し、そのまま入院し、急変して、
残念な結末になってしまいました。
現職中の死亡なので、健康管理部門では、
対応に不備はなかったかの検証が行われ、
問題なしとの判断がくだされました。
Bさんは、産業医や上司から、
「我々は最善を尽くした。
ミスはなかったし、予見することもできなかった。
仕方なかった。あなたが気にしなくてもいい」
そういう意味のことを言われたそうです。
上記の二つの事例では、
周囲の先輩、産業医、上司などが、
AさんやBさんをなぐさめ、励ましてくれています。
でも、Aさんも、Bさんも、すっきりしていませんでした。
なぐさめや励ましによって、気持ちが癒され、
前向きに切り替わることができなかったんです。
私はたまたま、AさんやBさんと話をする機会がありました。
最初は業務上で判断を迷っていることなど、
実質的な困難や悩みについて話をしていたのですが。
そのうちに、
「悩みというほどではないんだけれど・・・」
といいながら、
事例のような話に流れていきました。
二人とも、
「仕方ない。気にすることはない」と言われて、
頭では「その通り」だとわかっていました。
でも、モヤモヤしたものが残っていたようです。
おそらく、気持ちが納得していなかったのでしょうね。
私は、Aさんにはこう返事をしました。
「そうですよね~。
そういうネガティブなコメント見るとホントにヘコみますよね。
正直なところ、私もどうすりゃいいのかわからないですもん。
落ち込まなくても済む秘訣があるなら知りたいですよね」
と。
Bさんは私の後輩なので、ちょっと口調は砕けていますが、
こんなふうに答えました。
「よく、再検査を受けてもらうところまでフォローしたよね~。
それだけでもすごくない?
私だったら、要観察の人に再検査を勧めたとしても、
受けさせるところまでいかないだろうな~」
と。
はたしてこれが、
AさんやBさんのなぐさめや励ましになったのか・・・
本人に確認していないのでわかりませんが。
少なくとも、Aさんも、Bさんも、
「仕方ない」、「気にするな」と言われても
納得できていなかったわけなので。
別のアプローチが必要かなとは感じていました。
後日、Bさんと話したときに同席していた別の後輩から
「今田さんなら、気持ちをわかってくれると思ったんじゃないでしょうかね」
というコメントをもらいました。
そうかもしれませんね。
事実や理屈を頭ではわかっていても、
「仕方ない。気にしなくていい」と言われても、
納得できなくてモヤモヤしてしまうことがあります。
そんなときは、
「“気持ち”を受け入れてもらいたい」
のかもしれません。
なぐさめや励ましって、難しいですね。
改めてそう思いました。
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