私が企業の健康管理室で働いていたころ、
うつ病で休職していた社員Aさんの復職フォローを
していたときのエピソードです。
Aさんが復職後3か月くらい経ったとき、
Aさんの直属上司がO課長に変わりました。
O課長が自ら健康管理室へ来てくださって、
「僕はメンタルヘルスで休職した部下をもつのは初めてなので」
とお話されていきました。
Aさんは順調に復職の過程を進んでいましたが、
そうはいっても体調の揺れ幅は大きいです。
O課長に変わってから間もなく、
Aさんが少し調子を崩している様子がみえるようになりました。
そこで私はO課長に、
「Aさんがちょっと不安定になっているみたいなので、
気にしてあげてくださいね」
と伝えました。
するとO課長はこうおっしゃったんです。
「気にしてあげるって、どうすればいいの?」
「えっ!?」
と虚を突かれた私。
前任の課長のときは、あうんの呼吸で、
「僕も気になってたんだよ。何かあったら今田さんに相談するね」
って言ってくださってたので。
「気にしてあげて」とは、つまりどうすればいいのか?
それまで考えたこともなかった私は、
しどろもどろになってしまいました。
私:えっと、それは・・・
毎朝あいさつするときに体調をきくとか、
仕事が残っていても時間で退社できるようにするとか・・・
O課長:それはもうやっているけど。
業務量も本人と相談しながら調整しているし。
今はまだそんなに責任の重い仕事は与えてないよ。
それ以上に何か必要なの?
私:えっと、そうですね・・・
もうAさんのことをよく気にしてくださっているようなので。
・・・えーと、それでいいです。
ちなみに、毎朝の体調確認や退社しやすい声かけなどは、
前任の課長さんがO課長に申し送ってくれたそうです。
それをうかがってなおさら、
私の苦しまぎれの回答が恥ずかしかったです。
(>_<。)
あのとき・・・
O課長からストレートに質問してもらわなかったら、
私は気づかなかったと思います。
ずっと、あいまいに、
「気にしてあげてください」というアドバイスを、
わかったような気になって使い続けていたでしょう。
そして言われたほうは、
そんなあいまいなアドバイスもらっても、
困ってしまうだけかもしれませんね。
あるいはわかったような気になって、
でも実際には適切な行動ができないかもしれないし。
たまたま、こちらと同じようなイメージで受け取っていただければ、
いい結果につながることもあるかもしれませんが。
思い返せば、似たようなケースはいくつも思い当たりました。
例えば、ある社員さんから健康相談を受けて、
「“何かあったら”、また健康管理室へ来てくださいね」
と伝えて。
その後、音沙汰がないので気になって、
結局私からフォローを入れてみたら、
実は無理に我慢していたというケースがありました。
あのときは、
「どうしてこうなる前に健康管理室へ来てくれなかったの!」
と思うだけでしたが。
今思えばその社員さんは、
“何かあったら”の部分がどういうことなのか、
よくわからなかったのかもしれません。
私が、“何かあったら”の部分を、
「眠れない日が2~3日続いたら」とか、
「食欲がなくてご飯が食べれなかったら」とか、
「体重が2Kg以上減ってしまったら」とか。
もうちょっと具体的に、
“何かあったら”の内容を伝えていたら、
この社員さんはギリギリまで我慢する前に、
健康管理室へ相談に来てくれたかもしれないのに。
他にも、
健康相談で「無理しすぎないでね」とか、
保健指導のときに「もうちょっとがんばってみましょう」とか。
言っている私自身も漠然としていて、
内容や程度が具体的じゃないことを対象者に投げていました。
それでやった気になっていたことが多かったと思います。
そのくせ、こちらが思うような展開にならないと、
「もう~」
┐( ̄ヘ ̄)┌
ってあきれるなんて勝手すぎますね。
双方が納得する結果にならないのは、
もしかしてお互いのとらえ方がズレているからかもしれません。
その場ではお互いにわかったような気になっていたりとか。
相手も自分がわかってないことに気づいてないとか。
わからないけど聞くほどでもないと思ったりとか。
こちらからもあえて理解を確認するほどではないと思ったりとか。
ズレていることにお互いが気づけないままになってしまうのは、
よくあることだと思うのですが。
いかがでしょう?
私の場合、今でも不意に、
「気にしてあげて」がO課長に伝わらなかったときの衝撃が
よみがえってきます。
私にとって”教訓レベル”のエピソードだから、かな~。
(^▽^;)
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