保健指導をしていて私たち看護職から、
生活習慣改善の対策を提案しても、
対象者からこんな言葉が返ってくる場面、
けっこうありますよね。
「仕事が忙しいから、ちょっと無理」
「お金がかかるから、できないです」
「時間がないから、きっと続かないと思う」
などなど・・・
これは単なる“言い訳”かもしれません。
それとも、その人にとっては本当に、
のっぴきならない事情かもしれないです。
その見極めが難しいですけど、
保健指導ではとても大事な場面になりますね。
ちなみに私はそういう場面で思わず、
「そうですよね、難しいですよね」
と言ってしまって、
数々の失敗を繰り返してきたタイプですが(笑)
私たちは保健指導の場で、
「検査値の異常を放置したらおこるかもしれない健康障害」
を回避してほしいからこそ、
こうやって心を込めて説明し、説得しているのに・・・
あれやこれやと理由をつけて、
逃げようとする人たちをつい、
「まったくも~」
と、あきれたり、
「あなたの人生なんだから勝手にすれば」
と、あきらめたり、
してしまうんですけど。
そのあと、はっと我に返って、
「そういう対象者でも行動変容に導くのが仕事なのに、未熟だな~」
と落ち込んだりしてしまうんですけど。
誰だって、それなりに安定した今の状態から変化するのは、
しんどいし、怖いし、めんどうだから。
行動変容したがらないからといって、
「特別に聞き分けのない困った人」
というわけではないんですよね。
看護学生のテキストにはこんなことが書かれていました。
~~~~~~~~
生活の質(QOL)の向上は、慢性患者・医療者に共通の目的である。
しかし、しばしば両者には認識のギャップがおこりうる。
慢性患者は、病気を持ちながらも
現在のQOLをできる限りそこなわないで生活していきたいと願っている。
医療者は、患者がたとえ現在のQOLを多少そこなうことがあったとしても、
合併症などにより将来のQOLを低下させることがないように願っている。
つまり、慢性患者の考えるQOLはおもに現在のQOLであるのに対し、
医療者の考えるQOLは将来のQOLであるところに
認識のギャップが生じているのだといえる。
(系統看護学講座 成人看護学総論,医学書院)より
~~~~~~~~
毎年、この部分を学生に説明するときに、私の脳裏には、
禁煙の話をするたびに押し問答になってしまうAさん、
インスリン注射開始を嫌がって強硬に抵抗していたBさん、
減量指導をいつものらりくらりとかわし続けるCさん、
などなどいろんな対象者さんたちの顔が浮かびます。
そして思うんです。
ああ、私はこのギャップを埋められなかったんだな~と。
( ̄。 ̄;)
このような対象者さんたちにとって、
現在のQOLを大切にする視点も、
将来のQOLを大切にする視点も、
両方とも必要なんですよね。
私たちは、専門家の立場から、
合併症の危険性などの事実をきちんと伝える必要があるし。
でも、
「このままほっといたら怖いことがおこりますよ!」
というアプローチだけじゃなくて。
現在の生活習慣を変えるのはしんどいし、
ちょっと怖いし、めんどうだけど、
「やったらやったなりのいいことがあるよ!」
というのも伝えたいと思っています。
そのうえで、折り合いのつくところを一緒に探して、
考えて、行動変容を支えるというのが、
私の理想の保健指導なんだけどなぁ。
それがなかなか大変で、なかなか到達しない目標だと、
日々思わされていますけれどもね。
(^_^;)
記事の更新をSNSでお知らせしています。