前回の『産業看護お役立ちメモ』は、
「健康教育で頭が真っ白になるのが怖い」
という話題でお話しました。
私は、人前に立ってしゃべるのが大の苦手なので、
健康教育はできればやりたくない業務です。
でも産業看護職としてはそうもいってられませんが。
健康教育のときに緊張しすぎて頭が真っ白になったり、
焦りに焦って思い出したネタをくどくどと繰り返しちゃったり、
肝心なポイントを飛ばして先に進んでしまったり。
そういうピンチを回避するために、
私なりの秘策をもっています。
前回はそれをご紹介しました。
起承転結の骨組みを、
印象的なストーリーに仕立てて、
それをドラマチックに語る。
そのための一言一句を『台本』にしてつくっています。
そして今日は、
台本が“印象的なストーリー”になるように、
私が気をつけているポイントを2つ、お話したいと思います。
1つ目は、
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対象者の興味・関心がある話をする
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こちらの話を興味をもって聞いてもらうには、
やはり相手が関心を持っているテーマ・内容を話したほうが
印象に残りやすいです。
あたり前ですけど(笑)
でも、振り返ってみると、
健康教育のテーマを決めるときは相手の健康課題に合わせて、
「対象者にはこの話が必要だから」
と、こちらが勝手にテーマ・内容を設定してしまうことが多くないですか?
「あなたの健康保持・増進にはこの話が役に立つはずです」って、
最初っから押しつける・・・みたいな。
しかし、相手が関心をもっているテーマ・内容と、
こちらが「対象者の健康課題」だと思っているテーマって、
必ずしも一致しません。
どちらかというと、
対象者が関心を持っていないから健康課題になっている場合も多いので。
こちらは「対象者の健康課題」について熱く伝えているのに、
対象者のほうは「ふ~ん、そうなんだね」くらいの薄い反応になる、
という残念な展開になって。
そうするととたんに、こちらもその反応に引きずられて。
「あれ?? この話じゃダメ?? このままいくのはヤバイ??」
Σ( ̄□ ̄lll)
と焦ることになってしまう、
というのが私のパターンです(笑)
とはいえ・・・
対象者の興味・関心に合わせるだけの内容にすると、
こちらとしては「必要なことを伝えられていない」
という消化不良の思いをかかえることなります。
そこで、「対象者の興味・関心」を、
こちらが考える「対象者の健康課題」に引き寄せるように
ストーリーを工夫してみるんです。
対象者が関心を持つようお膳立てする感じです。
例えば、
誰もが知っている有名人や同じ会社の社員の話題など身近な事例を使うとか、
自分が体験した生々しい事例を語るのもいいですね。
統計資料を使ってその課題をかかえる人がけっこう多いことを見せたりとか。
対象者も経験したことがある事象が、
実は健康課題とつながっているということを説明するとか。
こちらが考える「対象者の健康課題」を、
「へえ、そうだったのか。じゃあ、自分にも関係あるんだな」
と思ってもらえるように、ストーリーをつくるんですよね。
2つ目は、
___________________
健康課題を解決したあとの素敵な姿を示す
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これはいいかえると、
「明るい未来、バラ色の未来、魅力的な未来、対象者が望む憧れの姿」
を、
「健康課題を解決すればこうなれますよ」
というふうに見せるということです。
私たち、意外と、
「健康課題が解決されないと、
こんなふうに怖いこと(大変なこと)になってしまいますよ」
っていう説明ばかりしていると思いませんか?
確かにそれは正しいし、真実なんですけど。
一方で人間は、
「都合の悪いものは目をつぶって見なかったことにしよう」
という心理が働いてしまうので。
あんまり将来の暗く重たい側面ばかりを強調すると、
そこから逃げ出してしまう人が続出するわけです。
対象者からよくある反論、
「でも、たばこ吸ってる人が全員が肺がんになるわけじゃないでしょ」
っていうのと同じです。
( ̄▽ ̄)
自分はそうならないと思うことで、
現実の健康課題に目をつぶり、
心の平静を保とうとするんですよね。
だから、明るい未来の姿もストーリーに組み入れておくんです。
「健康課題を解決したあとに手に入る素敵な未来」
も、しっかり見てもらって、
「こんなふうになれたらいいですよね、こうなりたいですよね」
ということを伝えるんです。
動機には、
「快の刺激を得るための動機」と
「不快を減少させるための動機」があって、
「自分のやりたいことをやるため」という
快の刺激につながる動機のほうが、
より行動変容につながるのだそうです。
だとしたら、
「健康課題を解決したらこんなにいい未来、
あなたの望む姿が手に入るのだから、
課題解決のために行動しましょう」
と呼びかけるのは、
「健康課題を放置したら、
将来こんな怖いことが引き起こされるのだから、
それを避けるために課題解決の行動をしましょう」
と伝えるのと同じように、
行動変容の動機づけになるということですよね。
しかも、対象者にしてみれば、
怖いことをいって脅す人よりも、
明るい気持ちにさせてくれた人のほうに
好意を持ちますから。
どうせならこちらに好意を感じてもらったほうが、
話もよく聞いてくれそうです。
私は、健康教育の台本が印象的なストーリーになるように、
この2つのポイントを取り入れてつくっています。
しかもこれ、
つくっているときの私自身の気持ちも上がります!
だって、対象者が“明るく楽しい未来を過ごしている姿”を
想像しながらストーリーをつくるので。
心から「そうなって欲しいな~」って思いながらつくっていると、
その気持ちが私自身をも、楽しくワクワクさせてくれます。
(^▽^)
・・・といっても、
本番で緊張して頭が真っ白になってしまうのは、
避けられないんだよな~。
だからやっぱり『台本』は手放せません。
(^_^;)
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