昔、一緒に仕事をしていた後輩Aさんの話です。
Aさんは20代で、
前職の看護経験がありますが、産業看護の業界は初めてで、
さまざまなことに苦戦しているようでした。
もともとの性格も、慎重というか怖がりというか。
積極的にいろんなことに手を出していくタイプではなくて、
なるべく目立たないようにミスをしないように、
ということを第一にしている子だなという印象でした。
私が気になっていたのは、
私と話すときにAさんが必ず「すみません」と言うことでした。
ミスを注意したときでも「すみません」
Aさんの仕事を手伝ったときも「すみません」
業務で困っていたのでアドバイスをしたときも「すみません」
Aさんから私に話しかけてくるときの第一声も「すみません」
だいたいこんな調子です。
( ̄。 ̄;)
当時の私は、職場で一番経験年数が長くて、
年齢もAさんより一回り上だったので、
私の存在がAさんを委縮させていたのかもしれません。
どんな場面でもAさんに、
「すみません」ばかり言わせてしまうのは、
私のせいなのかもと申し訳なく思って、
話しかけるのをやめたこともあったくらいです。
それからなんとなく、
Aさんと周りとのやり取りも気になるようになったのですが。
どうやら「すみません」というのは、
Aさんの口癖のようでした。
業務に関連した話をしているときは、
誰と話していてもまず、
「すみません」という言葉が出ているようでした。
そんな中、ちょっとしたきっかけがあって、
Aさんと改まって話をする機会がありました。
そこで私はAさんに、
「いつもまず、“すみません”って言ってるけど、自分で気づいてる?」
ときいてみたんです。
Aさんはこう答えました。
「えっ、そうなんですか。すみません」
このときも無意識に
「すみません」が口から出ていました。
私たちはコミュニケーションをとるときに、
相手の話を耳から聞いて、
様々な情報を取り入れています。
その結果、自分の中にいろんな感情が湧き起こります。
それと同時に、
自分が話していることも自分の耳で聞いて、
様々な情報を取り入れているんだそうです。
そして同じように自分の中に、
いろんな感情を湧き起こしているのだとか。
いつも丁寧な言葉づかいをしていれば、
自分の心にも優しさや余裕が生まれるし、
乱暴な言葉を使っていれば、
自分の心もささくれだってしまいます。
だから自分が使う言葉も選んだほうがいいそうです。
私はAさんにその話をしました。
そのうえで、こう伝えました。
「 “すみません”じゃなくて、
“ありがとうございます”っていう言葉に変えるといいと思うよ」
私も他の看護職も、同僚として、先輩として、
ミスした後輩をフォローするのも、
仕事が残っているなら手伝うのも、
あたり前のことだと思ってやっているのだから。
「すみません」と言われると責めているみたいで
申し訳なく思ってしまうから、
「ありがとうございます」って言ってもらったほうが
私もうれしいんだけど、と。
経験が未熟でミスをしたことにも、
仕事がテキパキ片づかなくて他の人に手伝ってもらったことにも、
「すみません」と言い続けていると・・・
「すみません」という言葉を日に何度も聞かされているうちに、
自分のことを、
「ミスが多くて、仕事もトロくて、周りに迷惑をかけているダメな存在」
と思わせてしまいそうです。
それでは自信がつくはずもなく、
何をやるにも怖がってビクビクしてしまうでしょう。
それよりも、
「ミスをカバーしてもらって、ありがとうございます」
「仕事を手伝ってもらって、ありがとうございます」
と、感謝の気持ちを言葉にしたら・・・
それを何度も聞いているうちに、
「今はまだ周りから助けてもらうばかりだけど、
次は自分が周りを助けられるようにがんばろう」
って思えますよね。
そのほうが成長できると思いませんか。
それからのAさんは、
「ありがとうございます」
という言葉をよく使うようになりました。
きっと自分で意識して気をつけるようにしたんだと思います。
そのことで、
Aさんが自信をつけてメキメキ成長した!
とかいうバラ色の展開ではありませんが(笑)
少なくとも私と話をするときには、
委縮している雰囲気がなくなって、
私からもアドバイスを伝えやすくなりましたよ!
なに気なく「すみません」と言っているシーンでも、
「ありがとうございます」に置き換えられる場面はけっこうあります。
もし、「すみません」じゃなくても、
「ありがとうございます」でもいけそうだなと思ったら、
あえて「ありがとうございます」を選んでみませんか?
言ったほうも、言われたほうも、
いい気分になれる言葉ですから。
(^▽^)
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