治療と就労の両立支援の範囲は広いな~

 

 

先週の『産業看護お役立ちメモ』では、

「治療と就労の両立支援は労働者の申告が出発点」

だから、労働者への周知・啓発が大事だ、

ということを書きました。

 

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「治療と就労の両立支援“出発点”ってどこ?」

 

がんを告知されて仕事を辞めた労働者のうち3割は、

がんと診断されてすぐに退職しているそうです。

 

一方で、がんによって退職した方の再就職は難しく、

3~4年たっても無職のままというケースも珍しくないそうです。

 

現状では、治療と就労の両立支援を受けられることを、

医療機関でも説明していないし、

会社からも説明されていないし、

産業保健からも積極的なアプローチがされていない状態であり、

労働者本人に情報が届いていないことが大きな問題です。

 

 

そして今日もこのつながりで、

学会で「治療と就労の両立支援」がテーマのシンポジウムを聞いてきた内容と、

私の感想をお話したいと思います。

 

「両立支援の範囲って広いんだな~」って、

思い知らされたので。
(^_^;)

 

 

 

 

労働者へ、治療と就労の両立支援の周知が進み、

 

「病気になっても治療しながら仕事を続けることが普通なんだ」

 

「そのために治療と就労の両立支援の相談窓口があり、

両立支援コーディネーターがサポートしてくれるんだ」

 

ということが理解されるようになったら。

 

労働者は安心して、自分が所属している会社・職場へ

「自分の病名、病状、配慮してほしい内容など」

を伝えるようになるでしょうか?

 

 

私は、そんな簡単な話ではないだろうなと感じています。

 

例えば、仕事を早退して通院するために、

がん治療中であることを職場に伝えたところ、

休憩時間などに

「〇〇さん、乳がんなんだって」

「え~、そうなの。かわいそう」

なんていう噂があっという間に広がった、

というケースも聞いていますから。

 

程度の差はあれ、あなたも、

似たような話を見聞きしたことがあるのではないでしょうか?

 

そうして会社や職場に知れ渡ると、

悪気はなく(むしろ好意から)

過剰な同情や気づかいをされるようになったり、

「仕事こなくていいから、治療に専念したほうがいい」といって、

患者である労働者を仕事から引き離そうとする価値観はまだまだ多いです。

 

あるいは、

どのように配慮すればいいかわからなくて腫れもの扱いしたあげく、

あまり重要でない仕事を渡して放っておく・・・

みたいな残念な対応になってしまい、

労働者がいたたまれなくなって仕事を辞めてしまうこともあるそうです。

 

 

病名や病状を会社に申告したことによって、

過度な同情や差別を受けたり、

自分に不利な状況になるのを恐れて、

「会社には知られたくない」

と考える労働者が多いとも聞きました。

 

確かに私も、

「会社には言わないでおこう」

と考えそうな気がします。
( ̄▽ ̄;)

 

 

 

 

シンポジウムでは、

がんの治療をしながら仕事を継続することになった場合に、

就労継続に影響を及ぼしたことについて紹介がありました。

 

例えば、

治療による倦怠感や脱毛、皮膚の黒ずみ、慢性疼痛、などの身体面の影響、

気持ちの落ち込みや意欲低下などの心理面の影響、

などがあるそうです。

 

薬の副作用でムーンフェイスになっているのに

「顔つやがいいね」と言われて傷ついた。

・・・ということもあるのだとか。

 

同じようなことは、

がん以外の疾患でもあるだろうなと考えられますよね。

 

そして当然のことながら、

そのような症状・体調不良があるときには、

会社・職場(関係者)の理解と協力が必要になるわけですが。

 

もし、関係者と情報が共有されていなかったら、

患者である労働者は心身の不調を隠して無理しなければいけないし、

職場もなんかおかしいと感じながら何をどうすればいいかわからない、

ということになります。

 

そんなふうに本人も職場も、

とまどい、悩み、苦しむのは、

本当に切ないことですよね。

 

 

あるシンポジストからこんな話がありました。

 

情報共有されていなかったケースで、

患者である労働者が亡くなった後に、

上司が「自分の対応が悪くて病気を悪化させてしまったのではないか」

と悩んでしまった、と。

 

患者である労働者が亡くなった後にも、

まだそこにケアを必要とする方々が残ることがあるんですね。

 

 

そう思うと、治療と就労の両立支援の成功のカギは、

本人と会社・職場(関係者)との情報共有なのかもしれません。

 

シンポジウムでは、

情報共有のルールづくり・仕組みづくりが重要だ

と強調されていました。

 

情報共有するためには、

病名や病状など非常に繊細な個人情報を取り扱うことになります。

 

情報共有が、万が一、情報漏洩になってしまったら、

患者である労働者にも、

周りの悪気はない関係者たちにも、

とまどいと混乱を起こしてしまうことになります。

 

そうならないために、

「誰に、何を、どこまで、共有していくのか」

情報共有のルールをつくり、

そのルールをみんなが理解して、

徹底できるような仕組みをつくる、

ということでしょうか。

 

 

 

 

私たち産業看護職は、

患者である労働者への支援と同時に、

受け入れる会社・職場(関係者)を支援する

という役割も担っています。

 

それはもちろんわかっているんだけど、

日々の業務の中ではつい、

目の前の“患者である労働者”のケアにばかり意識がいってしまいがち

ではないでしょうか?

 

例えば、

治療と就労の両立支援を労働者と経営者に啓発していくこと

とか、

情報共有と管理についてルールを整備し、周知し、順守されるようにしていくこと

とか、

会社・職場(関係者)と患者である労働者との調整をすること

とか、

医療機関や家族とも連携して患者である労働者の配慮を考えること

とか、

患者である労働者が亡くなった後に残された職場のメンバーのケア

とか。

 

 

もちろん、これが全部、

産業看護職が先頭に立ってやるべきこと、

というわけではないでしょうけれど。

 

ただ、「治療と就労の両立支援の範囲って、実はすごく幅広いんだな~」と。

 

全体像を見る視点が抜けていた、

と気づかされたシンポジウムでした。
(^_^)

 

 

 

 

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そしてただいま、新たな無料メール講座を準備しています。

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(^▽^)/

 

 

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