先月、産業衛生学会が名古屋で開催されました。
参加者が5,000名を超えて大盛況だったようです。
私も参加してきました。
バラエティに富んだテーマ構成でとても興味深かったです。
例えば、最近のホットな話題として、
「働き方改革」や「治療と就労の両立支援」などは、
シンポジウムも、教育講演も、特別公演も、口演も、ポスター発表も、
たくさんのプログラムが立てられていました。
もちろん、産業保健分野のド定番のテーマ(笑)も豊富でした。
「メンタルヘルス」とか、
「保健指導・健康教育・健康づくり活動」とか、
「有害物質管理」とか。
あとは、目新しいところで、
「AIと産業保健」をテーマにしたシンポジウムと講演もありました。
現場で活動していると、
つい目の前の課題の解決ばかりに気を取られてしまいますが。
たまにこうやって産業保健全体を俯瞰して、
トレンドや最新の知見を知る機会というのは刺激になりますね。
個人的には今回の学会では、
「治療と就労の両立支援」について
勉強したいと思っていました。
治療と就労の両立支援がテーマのシンポジウムで、
私がきいてきた話の中で、
「なるほど!」と思ったところを、
ここでみなさんとも共有したいと思います。
それは、
「治療と就労の両立支援は、本人の申告が出発点」
であるということ。
例えば、
対象者が診断や治療を受けている医療機関や、
対象者が所属している事業所などで、
両立支援の窓口を設けて、
積極的な支援を行っているとしても。
対象者本人がそこへきて、
支援が必要だと申し出ていただかないと、
両立支援は動き出せないんですって。
考えてみたら、確かにその通りだなと思いますが。
その視点、恥ずかしながら私にはありませんでした。
「私はどのように支援すればいいのか?」
ということばかり気にしていたので・・・
誰が支援を必要としているのかを知り、
どんな支援を必要としているのかを聞くほうが先だ、
ということがすっぽり落ちてました。
Σ( ̄□ ̄lll)
シンポジウムではこんな話が紹介されました。
「がん患者の半分程度は就労可能世代で罹患している」が、
「3~4人に一人が診断されてすぐに依願退職を申し出ている」
のだそうです。
そして無職になったがん患者さんは、
3~4年経っても再就職できないという方も少なくない、
という話でした。
診断直後からの治療は過酷で、
とても仕事に戻れるイメージがつかないかもしれません。
日々を生きるために必死になっているとき、
仕事をする気力など湧いてこないのかもなと思います。
でも、治療が功を奏して病状が安定し、
気力も戻ってきて、
必要な配慮のもとに仕事をすることが可能になったとしても、
現実として、
そのとき新しい仕事を得るのは難しいのですね。
シンポジストのお一人がこう強調していました。
「だから、病気になってもすぐに仕事をやめてはいけない」
と。
そして私たち産業保健関係者には
「労働者が“治療と就労の両立支援を受けられる”ということを知ってもらえるように、日ごろから活動してほしい」
とおっしゃっていました。
大事なのは、
就労が厳しいかもと思われるような疾患の診断を受けても、
依願退職を考える前に、
まず両立支援を思い出して相談してもらえること。
労働者が当たり前に、両立支援の窓口を知っていて、
そこへ相談に行こうと考えられるようになること。
実際の両立支援は
「本人の申告が出発点」
になるわけですから。
私たち産業看護職が熱い想いをもって、
様々な準備を整えて、
両立支援をさせていただこうと思っているのに、
私たちをスタートに立たせてもらえないことには、
始められないんですもんね。
さあ、じゃあ今日から。
「両立支援あるよ~」
「病気の治療と仕事と両方やるのは大変だなと感じたら思い出してね~」
「両立支援はあたり前に受けられるからね~」
って、労働者のみなさんにPRを始めたいですね。
(^▽^)/
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが。
「がん対策推進企業アクション」のホームページには、
一般の方向けのガイドブック「がん検診のススメ」や
「産業医向けのがん対策スライド」が公開されています。
「労働者健康安全機構」のホームページでも、
両立支援に関するリンクが目立つ場所に載っています。
労働者一人一人へ啓発するにも、
あるいは衛生委員会や経営層へ説明するにも、
何を伝えればいいのか考えて、
資料を一からつくっていくのはなかなか大変なので。
こういうところで公開されている資料を、
利用させていただくのもいいですよね。
私の場合は自分でもよくわかってないことが多いので、
私自身が理解を進めるのに役立ちました。
(^▽^;)
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