産業看護職が保健指導を行うのは、
健康診断の結果に異常値などがある従業員を呼びだして、
健診結果の説明とか、
精密検査・再検査を勧めるとか、
生活習慣の改善を指導するとか、
そういうパターンがほとんどだと思います。
そうすると、だいたい毎年、
同じ人が同じ理由(例えば、高血圧とか、糖尿病予備群とか)で
健診結果に引っかかり、保健指導にきてもらっている、
ということになるんじゃないでしょうか。
そしてたまに、気まずい雰囲気になったりします。
( ̄_ ̄;)
例えば、保健指導に呼びだしてきてもらった対象者が、
最初から防御態勢をつくっているケースとか。
おそらく、毎年保健指導に呼びだされて、
「血圧が高いからお酒を控えて」だの、
「血糖値が高いからもっと運動しよう」だの、
と言われているので、
本人だってまた何を言われるか十分承知しているからでしょう。
さらに、毎年同じことを指導されていながら、
言われた通りにお酒の量を減らしたり、
運動量を増やしたりできていないから、
自分でも後ろめたい気持ちがあるのかもしれません。
そして今回も保健指導に呼ばれて、
渋々、健康管理室へやってきたものの、
健診結果の問題点を真正面から突かれて嫌な思いをしたくないから。
私たち産業看護職の前に座ったときには、
相手はすでにきっちり防御態勢ができあがっている、
というわけです。
こんなとき、あなたならどうやって切り抜けますか?
私はまだ保健指導に慣れていないころ、
この防御態勢に圧倒されてしまうことが多かったです。
圧倒されて何を言えばいいかわからなくなり、
「もう、よくご存じだと思いますので・・・」
と話をはしょっりながら、
「もうちょっとお酒の量を減らした方が・・・」とか
「運動量を増やせば検査値もよくなると思いますよ」とか。
結局、そういう表面的なアドバイスをして
終わらせるという感じでした。
さすがに私自身も気づいていたんですよ。
これじゃあ相手に響いてないな、と。
こんなんで相手が行動変容するわけないよな、と。
そのせいで保健指導をやっている最中から自己嫌悪に陥ってしまい、
ますます気まずい雰囲気にハマっていました。
あるとき、思い切って、
私よりも経験豊富で保健指導が上手な友人の保健師にきいてみました。
そしたら彼女はこう言いました。
「そうだよね~。部屋へ入ってくるなり足組んで、腕組みして、って態度を取られたら焦っちゃう」と。
ええ、そうなの?
Σ( ̄ロ ̄|||)
気まずい雰囲気だと感じるのは私だけかと思ってました。
気まずい雰囲気に焦ってしまうのは私だけかと思ってました。
でも、違うんですね。
驚きました。
それから機会をみて、
他の保健師にもきいてみたりしましたが、
保健指導に呼び出している対象者の防御態勢を気まずく感じて、
とまどってしまう看護職は意外と多いようです。
あなたも、
自分だけじゃないとわかれば、
少し気が楽になりませんか?
では、どうやってその気まずい雰囲気を切り抜けるか?
私はアドリブがきかないタイプなので
(^_^;)
その場で気の利いた立ち回りをする自信がありません。
だからあらかじめ考えて、
いろいろ試してみて、
今は、
「相手が最初から防御態勢を固めていて気まずいな~」
と感じたときは以下のように対応しています。
まず、自分が気まずい雰囲気を感じていることを認めてしまいます。
そして可能であれば、
お互いに気まずい雰囲気を感じているであろうことを、
正直に話してみます。
「またか~って思ってらっしゃいます?」とか、
「なんかちょっと気まずい感じですか?」とか。
場合によっては謝ってしまうこともあります。
「いつも同じような話ですみませんね」とか、
「毎回しつこくてごめんなさい」とか。
そのあと、こう続けます。
「またちょっとお話しさせてもらってもいいでしょうか?」とか、
「私もこれが仕事なので、今日も少しお話し聞かせていただきたいんですけど。よろしいですか?」とか。
本題に入っていく前に相手の許可を得るようにすると、
そのあと話しやすくなりますよ。
私の経験上、
「ちょっと話をしたい(聞きたい)けどいいですか」
とたずねると、たいていの人は
「ん~、まあいいけど・・・」
って許可してくれますので。
そうしたら話を進めていきます。
相手も自分が許可した手前、
あからさまな拒否の態度は引っ込めて、
おとなしく保健指導に付き合ってくれます(笑)
このあと、いきなり本題に入ってもいいんですが。
私はもうワンクッション置いています。
相手に、
「毎年同じような理由で保健指導に呼びだされて、毎年同じような話をきかなければならないというこの状況を、あなたははどう感じていますか?」
ということをきくようにしています。
相手の正直な気持ちをききだしたうえで、
じゃあ、どうなっていくといいのか、どうしたいのか、
というのを一緒に考えてみるんです。
すると例えば、
「面倒だけど仕方ないと割り切って、毎年(保健指導に)くるよ」
と言われることもありますし、
「来年こそはここ(保健指導)に呼び出されないように、本気を出してがんばってみる」
と言われたこともあります。
あるいは
「もう、医者へいって薬を飲むことにするよ」
と言いだした人もいました。
いずれにしても、
本人が考え、本人の口から言いだして、最後は本人が決定する、
という過程が大事なのかなと思っています。
私たち看護職は、
本人がいい方向に考えられるように、
素直な気持ちを言い出せるように、
聴き役に徹するくらいの方がうまくいきますね。
そりゃ思わず、
「じゃあ、こうすればいいのに」
と言いたくなりますが、
そこをグッとこらえて(笑)
とはいえ、これは相手の言いなりになるということではありません。
あたり前ですが、
「単に保健指導にくるのをやめたいというのは通用しない」
ということは譲れませんよね。
保健指導は、産業看護職の個人的な思いで実施している業務ではありません。
いくら気まずくても、面倒でも、
お互いにやるべき意味と意義があることを、
私たち自身が明確に意識しておく必要があります。
そしてそれを、論理的に、毅然と、
説明できるように準備しておきましょう。
例えば、
法令で安全配慮義務があること、
会社と産業医と保健師の責任が問われること、
このままではどれだけ危険か看護職として非常に心配していること、
などなど。
これを準備をしておくと、
気まずい雰囲気に圧倒されそうになる自分の気持ちが折れないように
支えることにも役立ちます。
ちなみに、論理的な理由ばかり並べてしまうと、
かえって相手の態度を硬化させてしまうこともあります。
ときには情緒的に訴えて、
「あなたが心配だから、あなたの幸せのために、なんとか助けになりたい」
というアプローチのほうが響くかもしれませんよ。
その見極めとさじ加減に、
あなたらしさを発揮してくださいね!
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