保健指導の気まずい雰囲気をどうする?~全然できなかった編~

 

 

保健指導を受ける立場になって考えてみると。

自分の問題点をわかっているのに、

人から指摘されるのはいい気持ちがしませんよね。

 

私たち専門家から見れば、

『わかっているんじゃなくて、わかっている気になっている』

という表現のほうが正確な気がしますが。

 

とはいえ、保健指導では、

そういう「わかっちゃいるけど的な人」が、

「なるほど、そうか。なんとかしなくちゃいけないな」

という気持ちになれるようにもっていくのが

目的でもあり、難しいところでもあるわけで。

 

そのために、私たち産業看護職はあの手この手をつかって話を進めます。

ようやく健康改善のための行動目標を決めるところまでたどり着けたら、

心底ホッとします。

 

よね?
(^▽^;)

 

そして保健指導の最後の締めは、

「では、がんばってみましょう! 次回は〇か月後です。やってみてどうだったか、きかせてくださいね」

という言葉でお別れする。

そういうのが王道パターンでしょうか。

 

 

 

 

さて、〇か月後。

計画通り、フォローの保健指導に来ていただくわけですが。

やってきた相手は、なんか盛り上がらない表情をしています。

 

たとえ保健指導に慣れた産業看護職でなくても、

その表情を見ればなんとなく気づくでしょう。

「ああ、うまくいかなかったのかな」って。

 

 

「〇〇さん。前回は△△をやってみようっていうお話をしましたよね。どうでしたか?」

「全然できませんでした」

 

ああ、やっぱり・・・

思わず心の中で、こうつぶやいてしまいます。

 

もしかしたらこちらの表情にも、

がっかり感が出てしまっているかもしれません。

 

 

ところで・・・

「全然できなかった」って、

さまざまな人の口から何度となく聞いているセリフですが。

同じ返事でも、相手の心の内にある思いはいろいろです。

 

例えば、

「仕事が忙しくて、とても無理だったんですよ~」

という言い訳じみた気持ちもあれば、

 

「そもそも前回の話のときも△△をできそうな気がしてなかったしさ」

というあきらめの気持ちもあります。

 

「あんたが勝手に言ってただけだろ」

っていう不満の気持ちもあるかもしれないし、

 

「がんばるつもりだったのに、意志が弱くて無理だった」

と自分を情けなく思う気持ちも混じっているかも。

 

あるいは、心優しいまじめな方は、

「約束した相手である看護職に対して申し訳ない」

という気持ちを持っている場合もあります。

 

 

いずれにしろ、

「全然できなかった」という返事をきくのは、

看護職としては最高にガッカリする場面ですが。

 

そう言っている相手にとっても

いい気分ではないものなんですよね。

 

あたり前と言えばそうでしょうが。

あなたは保健指導の場面で、

その気まずさを察知していますか?

 

こちらにとっては割とよくあることだから、

意外と気づかずにスルーしてないでしょうか?

 

 

 

 

では、「全然できなかった」という報告をきいて、

次はどんなふうに働きかけましょうかね?

 

どうして「全然できなかった」のか、

その理由を聞くという働きかけがありますよね。

 

できなかった理由(原因)を明らかにして、

同じ失敗を繰り返さないように次の作戦を練る・・・大事なことです。

私もそうしていました。

 

でも、その一方で私は、よくこんな失敗をしていました。

それは『表面的な理由に振り回されてしまうこと』

 

 

例えば、

「いや~、仕事が忙しくて( ̄。 ̄)」

のように仕事を理由にされたら、

こちらとしてはそれ以上突っ込みにくいです。

「じゃあ仕事量を減らしてくださいよ」

とは言えませんし。

 

あるいは、

「意志が弱いから、いつもダメなのよね(T_T)」

なんて自虐的な返事が返ってきたら、

原因を探るどころじゃなくなってしまうこともあります。

「そんなことないですよ!」

って精一杯励ましているうちに、話がズレていっちゃったりとか。

 

たまに、

「そうですね・・・」と言ったきり、

考え込んでいるのかどうか、口を開いてくれない人もいて。

重苦しい沈黙に耐える羽目になったりもします。

 

 

これらの表面的な理由の数々は、

本人も根底にある本当の理由がわかっていないから、

なのかもしれませんし、

 

「そこは追求しないで、そっとしておいてほしい」

という意思表示なのかもしれません。

 

しかし残念ながら、そういう表面的な理由止まりでは、

有効な打開策にたどり着けることは少ないです。

 

かといって、

根底にある理由を突き詰めようと熱心になりすぎると、

問い詰めるような感じになって、

ますます気まずい雰囲気になることもありますし・・・
( ̄□ ̄;)

 

 

 

 

そこで、ちょっと発想を変えてみませんか?

まずは気まずい雰囲気を察知し、

中和することを優先してみましょう。

 

私の経験上、「全然できなかった」ってことはないです。

大なり小なり、”その人なりの何か”をやっています。

それをきいてみてください。

 

なんでもいいです。

「そういえば、これをやった」ということを

とにかく思い出してもらいましょう。

 

もしも、本当に、本当に、

「全然できなかった、何もやってない」

と相手が言い張るのなら(笑)

 

前回から今回までの間に、

健康保持・増進に関係ある何かをやっているんじゃないですか

ってきいてください。

 

新しく始めたことじゃなくてもいいです。

前から続けていることとか、

ちょっと気をつけていることとか、

些細なことでいいんです。

 

このご時世、健康にいいことをまったくやってないという人はいないと思うので。

何かしら出てくると思います。

 

 

そして、相手から

「そういえば、◇◇をやったっけ」

と言うセリフが出てきたらOK!

 

こちらからは肯定的な返答を、

少々オーバーリアクションで返してみてください。

 

「おお、それはよかったですね」とか、

「ああ、そういうのもいいですよね~」とか、

「うわ~、ちゃんとやれてることもあるじゃないですか」とか。
(^_^;)

 

そしてさらに、

「他にありますか? なんでもいいんですよ」

と、いくつもいくつも出てくるように促していきます。

 

ちなみにこれは、やったことの大小や重要さとは関係ないです。

相手が、自分の中から、数多く出せること、がポイントです。

 

 

さあ、こうして、

とにかく「やったこと」をたくさん出してもらいましたね。

 

そしたら最後はこの言葉でまとめます。

「なんだ~、こんなにいろいろやってるじゃないですか。だから『全然できなかった』わけじゃないですよね」

 

これで相手自身が

「そうか、確かに。全然できなかったわけじゃないな」

と納得してくれたら。

きっと表情が明るくなっていると思いますよ。

 

そしてここまでくれば、

気まずい雰囲気もずいぶん和らいでいることでしょう。

相手の自己効力感も上がってきてると思います。

 

 

それでは、改めて。

 

行動目標ができなかった理由を聞くなり、

実は内心でやりたいと思っていることがあるのか聞き出すなり。

 

この先は、あなたのやりやすい方法で

保健指導を進めていってくださいね!

 

 

 

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