ピュア産業看護事務所では新米産業看護職向けの産業看護セミナーを開催していて、
今年度の前半は「保健指導」がテーマでした。
セミナーでは保健指導に対する苦手意識を減らして、
自分らしい保健指導を自信をもって行うきっかけとなるようお手伝いをしています。
その中で、保健指導の苦手意識について参加者に振り返ってもらっていますが、
ほとんどの方が「そうそう、そうなんですよ~」
とおっしゃる苦手意識のもとがありました。
それは、保健指導をしていて、
「対象者から質問されたとき、ちゃんと答えられるか不安」
「答えられるようにするためにもっと知識を得たい」
「保健指導が苦手なのは、質問されるのが怖いというのもある」
ということ。
そうですよね~、確かに。
私もそう思ってました。
知識も経験も浅い新米の産業看護職のころは、
「こんな私が保健指導をやってもいいのかな」とか、
「私に偉そうに指導する資格ないのに・・・」とか、
気が引けてしまう気持ちありますよね。
よくわかります。
きっと新米さんのころには、誰にでもある不安じゃないでしょうか。
だから産業看護職は、
知識を習得することに、まじめに貪欲に取り組む方が多いんでしょうね。
じゃあ、そうやって知識を増やし、
保健指導の経験が積み重なっていくまでは、
今の不安や苦手意識はどうしようもないのでしょうか。
・・・というと、実はそうでもありません。
コツコツ経験を積んで知識を蓄えていく間でも、
保健指導の苦手意識を緩和できればありがたいですよね。
そのために、
ちょっとした視点の変換と、
対応の工夫を2つほどご紹介したいと思います。
ではまず、
「質問が怖い」
「答えられないと恥ずかしい」
「知識が足りない」
「だから保健指導が苦手だ」
というあなたの視点をちょっと変えてみましょう。
この苦手意識の背景に何があるのでしょうか?
「答えないと信用してもらえない」
とか、
「呼び出したからには相手の役に立たないといけない」
とか、
「私のことをすごい人だと思ってほしい」
とか、
「専門職としての自分の存在意義を認められたい」
とか。
こういう気持ちがありそうです。
私はそうでした。
(^▽^;)
確かに・・・
仕事が忙しい対象者さんを呼び出して保健指導をするわけですから、
相手がそれなりにこちらを認めてリスペクトしてくれていないと、
保健指導をしていて”しんどい”というのは事実ですよね。
ただ、
そのことを重く受け止めすぎて、
「自分で勝手に保健指導のハードルを上げ過ぎているのかもしれないな~」
って思ってほしいんです。
質問に答えられないからと言って、
あなたの専門職としての存在価値が下がるわけではありません。
私たちは相手より少しでも多く・広く知っていることがあれば、
それで指導する資格はあると考えていいんだそうですよ。
経営コンサルタントの話で聞いたんですけど、
「専門家は相手よりも、少しでも多く・広く知識を持っていれば、それでいいんだ」
と言ってました。
例えば、健康や医療に関する知識をすべて網羅するのは、
誰にとっても不可能なことです。
高名な医者でも優秀な大学教授でも、全てを知っているわけではありません。
だとしたら、彼らにも知らないことがあるわけで。
「知らない」とか「わからない」と言うこともあるでしょうし、
それによって専門家としての誇りが傷つくとは考えていないと思います。
むしろ、知らないことをごまかさずに、
「知らない」と言える正直さや誠実さは、
相手の信頼を得るためにプラスに働くこともあるのではないでしょうか。
冷静に考えても、
私たちは3~4年間、学校で医学や看護学を学んでいます。
卒業後も専門職としての経験を積んできています。
だから当然、保健指導の対象者よりも知っていることがたくさんあります。
つまり、今のあなたのままで十分なんです!!
ただ、あなたのもっている”知識の見せ方”を少し工夫すると、
もっと気持ちが楽に切り抜けられるようになります。
(^▽^)
対象者から聞かれて答えに詰まるパターンの一つとして、
「△△が健康にいいって聞いたんだけど、本当なの?」
と質問されるようなケース。
よくありますよね?(笑)
世の中、次々と新しい知見が発表されていて、
それにいち早く飛びついて紹介しているメディアもあります。
あるいは、根拠の怪しい健康情報も、
出ては消え、出ては消え、っていう感じですもんね。
しかし自分は聞いたことなかった健康情報について質問されると、
「えっ、それほんとなの?」って焦ってしまって、
しどろもどろになったり。
あるいはよく聞きもしないで
「それはちょっと怪しいですよ」と一刀両断して、
その話題をさっさと終わらせてしまったり。
こういう対応をすると、
後でなんとなく居心地が悪くなるんですよね~。
こんなとき、私はこんなふうに対応しています。
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「え~、そうなんですか? 知りませんでした」
と正直に言う。
そのあと、
「そうなんですね、〇〇さんはよくご存じですね~」
と、相手の言うことを否定も肯定もしないで受け止める。
それから、
「具体的にはどういうことなんですか。教えていただけませんか?」
と、相手に説明してもらうようにする。
まず相手に、相手が知っていることを話すように促して、
私は専門家の視点でそれを聞きます。
聞いていて、相手の言っていることが正しいなと思えば
「そうなんですよ、それは医学的にも正しいことですよ」
と伝えますし。
反対に、間違っているとか、ちょっと怪しいなと感じたら
「それは、医学的には間違ってますよ(間違っているかもしれませんよ)。
ちょっと、私も調べてみますね」
と伝えて、いったん預かります。
そして後日、自分なりに調べた結果を相手にフィードバックしています。
もし調べてもよくわからなければ、それも正直に伝えます。
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もう一つ、
自分の知識が足りないと焦ってしまうパターンとしてよくあるのが、
保健指導の相手もいろいろ細かい知識を持っていて、
こちらが説明していると、
「そんなこと、もう知ってるけど」という態度をとられてしまい、
気まずくなるというケース。
Σ( ̄ロ ̄|||)
この場合、
私たちは専門家としての存在感を見せつけるために、
相手の上をいく知識量で対応しなければならない・・・
と、変に肩に力が入ってしまうこと、
ありますよね~(笑)
こういうときは、私はこんなふうに対応しています。
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このパターンでも、まず相手が知っていることを先に話してもらうように促す。
そして相手の話を聞きながら、関連の内容で、
「これも知っててもらうといいな」と思うことを一つか二つ見つけて、
「今のお話に関連して、これも覚えておいていただくといいと思うんですよ」
と言いながら、追加の知識を伝える。
あるいは、自分の経験上で他の人の事例をいろいろ持っているので、
その中から参考になりそうな事例を伝えてみる。
そうすると、
「え~、他の人も同じなの?」
とか
「えっ、これって僕だけなの?」
という感じで、
相手に気づきを与えられたりします。
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私がやっている対応例を2つご紹介しました。
一つ目のパターンも二つ目のパターンも、
①まず相手の知識量や内容を確認しながら、
②それとかぶっていない部分で、自分の知識や情報を提供する、
という方法です。
これは決して相手の知識を上回ろうと躍起になっているわけではなくて、
私自身がもっている知識の見せ方を工夫しているだけです。
それでも相手にしてみれば、
自分の知らなかった情報を提供されたことになりますから。
「この人は自分よりも知識をたくさん持っている人なんだな、さすが専門家だな」
と思ってくれるんですよね。
(^▽^)
姑息な方法だと思いますか?
実は、経験を積んだベテランさんは意識的か無意識かは別にして、
このような対応を自分なりに習得して使いこなしているんだと思います。
つまり、こういうふうに対応を工夫するのはテクニックの一つなので、
やり方を真似すると同じような効果が期待できるということです。
もし、同じようなケースでお困りでしたら、
一度、お試ししてみてくださいね!
(^▽^)/
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