鳥の目と虫の目

 

 

今日の話題は「鳥の目と虫の目」です。

もしかしたらどこかで聞いたことがある話かもしれませんね。

 

そうです。あなたがご存知の「鳥の目と虫の目」の話です。

なんのひねりも新発見もない話ですので、

ご存知の方はスルーしてください(笑)

 

 

ではここからは、

「鳥の目と虫の目? は? それ何?」

という方に向けてお話ししていきます。

 

産業看護は目の前の対象者一人ひとりにケアを提供しますが、

それと同時にその人が所属する集団に対するケアも行います。

 

産業看護には、

目の前の個人を対象にした「個に対するケア」と

集団の健康向上を対象にした「集団に対するケア」の

両方を行う役割があるからです。

 

その役割を果たすために、

『一点に集中して細かくみる視点』と『全体を俯瞰してとらえる視点』

この2つの視点が必要だといわれています。

 

それをイメージしやすくする意味で、

保健師の業界では「鳥の目と虫の目」という表現で例えられているんです。

 

 

ちなみに、

産業看護は「個と集団を両方ケアする役割がある」

ということをなんとなく知っていても、

それがどういう概念なのかがあいまいな方もいらっしゃると思います。

 

そう言ってる私自身が、ずーっとあいまいなままでした。
^_^;)

 

看護学生向けの教科書の記載をご紹介しますね。

産業看護は公衆衛生看護の一つの分野です。

そして公衆衛生看護の対象とはどのような人たちか、

ということについて以下のように書かれていました。

 ↓ ↓ ↓
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

健康的な生き方を望み、自主的な意見を持ち、

理性的な判断をなしうる人々の集団(公衆)が、

それぞれの生命と健康を守る責任を果たすための実践、

それを支持すること。

_______________

 

 

ここでいう”人々の集団”というのは、

集団という一つの塊のことをいっているのではありません。

 

上のイラストにあるように、

一人ひとりが集まってできた集合体が「集団」というとらえ方になります。

このイメージを間違えないでくださいね!

 

「個人個人の集まりとしての集団」の特徴をとらえて公衆衛生看護活動を行い、

その成果は一人ひとりの個人に還元されるものでなければならない、

のだそうです。

 

例えば・・・

 

ある職場でインフルエンザが発生して、

そこで働く人々の健康が脅かされたとき、

予防接種やうがい・手洗いなどの予防対策を推進して、

インフルエンザ感染の拡大を防ぐのが私たち産業看護職の活動ですが。

 

それは集団のインフルエンザ感染拡大を防いで集団の健康をまもるのと同時に、

集団の中の一人一人に”インフルエンザに感染しないという成果”を還元すること。

これが大切だという意味ですね。

 

このように、目の前の個人を見る”虫の目”と、

個人が集まってできた集団を見る”鳥の目”を、

もう一つ、今度はメンタルヘルスの例でみてみましょう。

 

ある産業看護職が担当している会社では、

従業員のAさんがメンタルの調子が悪くて休んでしまいました。

 

”虫の目”でこの事例に対応すると、

「Aさんの病名は何か、どんな症状があるのか、

通院はしているか、いつごろから調子が悪かったのか、

仕事が忙しくてストレスが多かったのか」

 

まあこんなふうにAさん個人の情報を収集して、アセスメントして、

Aさんに必要なケアを考えます。

 

そして、Aさんに薬をきちんと飲むことの必要性を説明したり、

睡眠がちゃんととれるようなアドバイスをしたり、

などのケアをやることになるでしょう。

 

ではこの事例に”鳥の目”で対応するとしたらどうでしょうか?

例えば

「同じ部署の中にAさんと同じようにメンタルの調子を崩している人がいないかどうか、

もしいるとしたらそれは仕事が忙しすぎて負担になっているのか、

上司が厳しすぎて部下にストレスがたまるのか、

同僚や先輩・後輩同士で助け合っているのか」

 

”鳥の目”の視点ではこのように、

対象であるAさんの周囲の人や環境にも目を配っていきます。

 

そしてさらに、

もう一つ外側から俯瞰した”鳥の目”の視点でとらえると、

「もしかしたら隣の部署でも似たような問題があるかもしれない、

この会社全体でメンタルヘルスがいい状態ではないのかもしれない」

と考えることができますね。

 

それにそって情報収集とアセスメントをしたところ、

そのような状態であれば、

 

各職場から管理者を集めて、

部下のメンタルヘルスをいい状態にするためのメンタルヘルス研修を開催する

という対策を行ったりします。

 

メンタルヘル不調者への対応として一般的に行われていることをたどっていけば、

”鳥の目と虫の目”を使わなくても、

結果的に同じケアが行われることになるでしょう。

 

ただ、”鳥の目と虫の目”を意識すれば、

健康課題をとらえるときの自分の視野を意識的に広げ、

戦略的な対応を考えることができると思います。

 

もしそれが、”鳥の目と虫の目”のことを知らなくできてないとしたら・・・

もったいないな~と思いませんか。

 

というのも、私は長いこと”鳥の目と虫の目”のことを知らず、

目の前の対象者だけにかかりきりになってしまう、

という視野の狭さに気づかずにいましたから・・・

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